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パワー・オブ・ザ・ドッグのひでGのレビュー・感想・評価

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)
4.4
Netflixどうしようか?今のうちに観ちゃおうオリジナル作品特集⑤
5本目でネトフリ本命作!
この作品のお噂はかねがね聞いていましたが、いつか観れるだろうと、後回しにしていた。

今までの4本のオリジナル作品とは、一段も二段も格が違う!今年観た配信作の中でもトップクラスの圧倒的なクオリティの高さ!

ジェーン・カンピオン監督が、アカデミー監督賞を獲得。この年、作品賞は「ゴーダあいのうた」。これも大大大好きな映画だけど、観た人のいろんな感情に訴えかけるという点ではこっちの作品賞でも、とも思う。

一言では、一回の鑑賞では語りきれない作品なので、何がそんなに良かったのか、どこが好き、凄いと感じたかを散文的になっちゃうけど頑張って振り返ってみよう。

1920年代のモンタナ。広大な土地を放牧している牧場主のフィルと弟のジョージ。兄弟だが雰囲気が違う。古の西部魂をそのまま守っているような粗暴なフィル。食事の際には正装するような静かな男ジョージ。
フィルたちが立ち寄った食堂。そこを女手1人で切り持っているローズ。彼女の息子ピーターは、食卓を紙花で飾るなど中性的な青年。この場面、普通の食事シーンなのに、とても緊迫感があり、目が離せない。凄い映画は、何でもない場面が凄い。

優しいジョージはローズに惹かれ、2人は結婚するのだが、フィルはローズに高圧的な態度を取り続ける。フィルの攻撃的な言動は、ローズが嫁いできてさらに激化し、彼女はそのプレッシャーからアルコールに溺れるようになる。
ここまで書くと、フィル=悪で粗野、ローズ=善みたいな図式を観客は予測してしまうよだが、そうじゃない。フィルは、教養もあり、他人を見る目もとても鋭く、ここでフィルは只者ではないのに、気付かされる。
紙の花を一目見て、それを作った息子のピーターの特性も見抜いてしまう。

ザ・カーボーイのようなフィル、虫も殺せないような弱々しいピーター。母の嫁ぎ先に遊びに来たピーターはフィルと接することになったのだが、これも全く予想しなかった展開を見せる。

いやあ〜この複眼的な人間像、凄いわ!
フィルを演じるベネディクト・カンバーバッチ、もちろん上手い人だから、上手いことは知っているけど、いやあ、凄いわ、こりゃ!

単にマッチョな時代遅れのカーボーイではない、その内面にその外見や言動と真反対のアイデンティティを抱えている。

それに唯一気付いたのが、みんなからナヨナヨと蔑まされていたピーター。彼も内面に母親でも分からなかった自己をフィルを通して自覚する。
そして、この映画は、「はあ〰️なるほど、」と思わせて観客(僕)をまたラストでひっくり返していく!

カンピオン監督の代表作「ビアのレッスン」も同じように嫁いで来た母子(ビアノは母娘)だったが、それ以上に深い部分にまで切り込んでいく。
「ピアノレッスン」では直接的な性的な場面が
あったのに対して、本作は殆どそれがないのにも関わらず、とても性的な匂いを感じさせる。

きっと見逃している部分も多いだろうから、近いうちにもう一度観たい。

実は経済的な事情からネトフリの解約も考えいて、今のうちに話題作は観ちゃうおうとこの夏思っていたんだけど、これをもう一回観るまで解約はやめよう、と😅
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