Jun潤

鬼が笑うのJun潤のレビュー・感想・評価

鬼が笑う(2021年製作の映画)
3.7
2022.06.26

Filmarksで見つけて即鑑賞を決めた作品。
鑑賞前時点ではポスターを見た程度ですが、Twitterに流れてきた情報を見るとなんだかワクワクがムクムクと…。
根拠の薄い期待感を高めて鑑賞です。

兄弟映画制作チーム「MINO Bros.」の第二作目。
一作目の存在どころかそんな方々がいるとも知らない状態でしたが、MCUで言うところのルッソ兄弟のようなものだと思えば不思議と安心するし、日本にもそういうユニットがいるのかと希望も滲み出てきますね。

父の暴力から母と妹を救う為、実の親を殺害した石川一馬。
更生保護施設で生活し日雇で働きながら、ちゃんと生きていこうとする一馬だったが、劣悪な労働環境に理不尽で不条理な人間関係、自壊して宗教に洗脳される母親、再生できたけれど家族との関わりを断つ妹、厚生の対象者をゴミと言い放つ職員と、社会は簡単に一馬を許してくれはしない。
そんな時、外国人労働者で中国からやってきた劉と出会う。
劉との邂逅から徐々に人間らしい感情を取り戻していく一馬だったが、悲劇の運命は彼らを逃してはくれなかったー。

ムムッ、及第点かなという感じ。
悪い点とまでは言えませんが、スコアが伸び悩んだ理由としては、もう少しオリジナリティというか、大作ではないなりにもっとエッジの効いた内容にできたのではと感じてしまったところ。
良かった点としては、監督・脚本の三野兄弟や主演の一馬を演じた半田周平の存在を知れたことですね。
2作目にしては完成度が高い、荒削りな中にも堅実な映画作りの印象を受けさせる輝きも含んでいました。
半田周平も、端正な顔立ちからは透明感と実直さを感じ、しかし時々ベテラン俳優かのように放つ雰囲気だけで感情を表現する力強さもある。
こんな方々がいるのだということを知れるのもミニシアター作品のいいところ。

物語としては現代社会や人間の闇のよくばり“アン”ハッピーセットと言った感じ。
それが前述のオリジナリティが欠けていることにも繋がっているのですが、犯罪者、殊更殺人“鬼”にフィーチャーしてその結末までを徹底的に描いているのは好感が持てました。

自分の家族を殺す事件というのは本当に悲しい。
被害者遺族であり加害者家族である、罪の意識も罰の意識もある、守られるべきか、糾弾されるべきか。

殺人という非人道的なことをしてしまった者は人ではなくもはや鬼。
作中の一馬と劉のように、鬼は人と関わることで人に戻れるのかもしれない。
しかし劉も事故とはいえ人を殺してしまい、鬼になった。
福は内へ、鬼でしかいられない一馬は、幸せを願い続けてきた母と決別し外へ。
そして鬼は鬼のまま、地獄へ舞い戻るー。
Jun潤

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