デヒ

ベルファストのデヒのネタバレレビュー・内容・結末

ベルファスト(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

【宗教の葛藤と嫌悪、移住に対する葛藤…。故郷を去らねばならなかった子供。残った者たちと去った者たち、命を落とした者たち。『cinema PARADISE』と『ミナリ』。】

1965年の北アイルランドを背景に、カトリック教とプロテスタントに分かれていた、過激な思想を持つ集団が宗教の価値観が異なることを理由に暴力紛争を起こした時代を背景にしている。
映画は開始5分から紛争を見せてくれる。幼い子供のBuddyが出くわした暴力の現場。スローモーションとBuddyの周りを回るカメラワークとBuddyの表情によって衝撃ともに戦慄が感じられた。
主人公Buddyの家族はカトリック教で、やられる立場だった。過激な紛争に国家では軍隊を送って村の治安を保護しようとするが、引き続く紛争。それでBuddyの父親はオーストラリアまたは英国に移住しようと提案するようになり、母親は生まれ育った故郷を離れることはできないと葛藤するようになる。その姿を見つめるBuddy。

映画は純粋さを持続している。 純粋だけど、賢い。 笑いの要素も多数あった。そんなBuddyが悲しむことになるのを見るのが苦しかった。

Buddyの家族と近所の住民の女性との対話。「アイルランド人は元々放浪者人生だった」

この映画は、ケネス·ブラナー監督の自伝的な話だという。Buddy中心の学校の様子、Buddyの視線で見る家族の姿と村。 そんな中でも印象深かったのは、映画館にいるBuddyの家族たち。映画館とは、約2時間の間、外部と断切された空間で映画を観る空間である。しばしでも現実を忘れて夢の世界に入ることができる空間。映画の中の背景もまた、外部は暴力と葛藤の連続、しかし家族は映画館にいる瞬間だけは明るく笑っている。何か切なくなった。
Buddyの家族は空港に向かい、祖母(ジュディ·デンチ)のアップを最後で映画は終わりを迎える。そして「残った者たちだちと去った者だちと命を落とした者だちへ捧ぐ」というテロップが出て映画は終わる。ケネス·ブラナー監督の自伝的な話を手がけただけに、Buddyが映画の主人公といえるだろうが、もう一人の主人公は「残った者たち」、祖母ではないのか。映画をもう一度観るなら、残った者たちを中心に映画を観ていきたい。

もう言い切れないけど、傑作だった。
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