このレビューはネタバレを含みます
テーマは故郷、自分の愛する街と理解しました。
【良かったポイント】
①美しい映像
最初のカラー映像での街並みの美しさに引き込まれました。映像の画質の良さで、まるで現地で風景を見ているかのような感覚に陥りました。色鮮やかな街並みは、その町の魅力を際立たせています。監督のケネスブラナーの故郷ということで自分の街を魅力的に見せたいという深層心理もあったのでしょうか。
また物語に入ってからも、固定されたカメラで、芸術のような舞台を切り取る場面が多く、常に「美しい」という感覚を覚えました。全く似ているというわけではありませんが、なんとなーく小津安二郎の映画のような印象を得ました(特に最後のシーン)
②明るさ・希望を感じさせる音楽
最近の映画は本当に音楽が素晴らしいと感じます。ヴァンモリソンの音楽がちりばめられていて、家に帰ってさっそく彼のプレイリストを聴きました笑(ヴァンモリソンもベルファスト出身なのですね。)物語の中では、街に残るか、離れるかといった難しい決断を迫られたり、父母の喧嘩、街の抗争等、暗く重い場面が続くのですが、その中でなんだか明るい気分にさせてくれたのが音楽だったと思います。
③家族の含蓄深いセリフ
父・母・祖父・祖母と主人公の少年が対話するシーンがこの映画の一番良いところだったと思います。お気に入りのシーンは2つありました。
(1)病院での祖父とのシーンでの、「理解できないのはわかろうとしないからだ」
(2)最後、父がバディに言う「優しくて、フェアで、お互いにリスペクトできればよい」
祖父や父は日々葛藤を覚えている中で、経験から出された言葉のように聞こえて、すごく説得力があるように感じられましたし、それを演技で表現する(演技を超えて本当にそう思って言っているように感じる)ところには感銘を受けました。
④去る家族、残る祖母、逝く祖父
映画の最後に、ベルファストの街を映しながら、街を去るもの、残るもの、命を落としたものというテロップが出てきて、それはおそらく、ケネスブラナーの「ベルファスト」に対するメッセージだったと思います。その対比・構造を登場人物の家族の最後に投影しており、それぞれの立場の人の思いというものを、家族の姿から考えさせられました。私も自分の故郷を離れて上京した身であることから、自分の街についてすごく考えさせられました。
【気になったポイント】
①背景知識不足(自分の問題)
・途中で登場する映画の意義やプロテスタントとカトリックの関係について、もう少しわかっていればもっと味わい深くなったのかなと思います(これは自分の素養不足でしたね(-_-;))
②人物関係が少し理解しにくい
・登場人物が数えきれないほど多いわけではないですが、そこそこ登場する中で、あれっこの人だれだっけということがありました。なかなか登場人物の関係を伝えるのはこの映画に限らず難しいですが、どうにかもう少しわかりやすくならないかなぁと思うこの頃です。
改めてよい、美しい作品でした。