あまりこういう個人史的というか、私的なセラピー（And the healing has begun…）の意味合いがそのままある集団の歴史に重なってるような作品を悪く言う気になれないのだけど、「それを言わないのが映画では？」と思うような瞬間が何度かあった。あのとき目を見開いて眺めていた古い映画の質感を白黒の画面で出そうとしたのかも知れないけど『アンジェラの灰』の胸が締めつけられるような高揚には遠いんだよな…。でも朝焼けのH&W造船所とともに響き渡るヴァンモリソンで気持ちはしっかりベルファストにチューニングされたし、母親役の女性の非常に身を削った演技はよかった。ヴァンモリソン、ただ曲使ってるだけじゃなくてしっかり音楽噛んでるのかな。
