イマイチだとは思ったけど、「いつものエメリッヒ」みたい言われると、いつものエメリッヒよりだいぶ精彩を欠いてると思う。むしろ"あのローランド・エメリッヒが、月を落とす"から期待されるスペクタクルにもディティールにももう何歩か足りない感じ。
露骨に合成で誤魔化してる遠景カットが目立ったりしてて、予算なのかコロナ禍なのか、規模感でだいぶ苦しんでる様子も感じられるけれど・・・
「ゴジラ」のときの巨大ミミズと難破漁船、「ID4」の宇宙信号、「ディアフター~」なら夏に降る雹みたいな、「月が落ちてくる」から連想される段階を踏んだカタストロフ描写や滅亡シュミレーションに、スペクタクルのアイディアでも文芸面でも欠けていて、いつものホラ話に乗せる上手さが発揮されてない気がした。ああいうところの上手さが、エメリッヒを単なるB級スペクタクルとは一線画していたと思うのだけれど。滅亡の予感パートって、意外に一番楽しい部分だったりするし。
「月建造物説」なりなんなり馬鹿は馬鹿で、トンデモ陰謀論ならトンデモ陰謀論でぜんぜんOKなので、小5だったら信じてた次の日クラスで「月は人工物らしいぞ」「月は落ちるらしいぞ」と言いたくなるトンデモ学童雑誌感。劇場公開してたらパンフレットに天文学者だか呼んじゃって「この映画も全く絵空事とは、言い切れないかもしれませんよ」とか何とかみたいなコラムが一筆添えてあるような、あの感じ。あの感じを期待してた。