金春ハリネズミ

世界で一番美しい少年の金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

世界で一番美しい少年(2021年製作の映画)
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「ヴェニスに死す」からやってきました。
「世界で一番美しい少年」ことビョルン・アンドレセンさんの、現在から過去へ悼む鎮魂の回想譚。

若輩者の私からすれば、「世界で一番美しい少年」とか大きく出られると、またまたぁ〜、とかちょっとシラけちまうんですけど、当時は結構本気だったみたい。

例えばフランスの名優ジャン・ポール・ベルモンドがルパン3世、コブラのモデルだったりするのと同じように、「ベルサイユのばら」のオスカルこそ実はビョルンその人だったというこの衝撃の事実。
どひゃあ。ビョルン。

確かに「ヴェニスに死す」で魅せたそのオーラ、永遠と一瞬とが同居するようなその佇まい。
「美しい」ってきっと彼のために用意された形容詞なんだと確信してしまうほどの存在感に圧倒してしまいますた。

けどね、彼だって本当は市井の少年だったんですって。
別に俳優業とか、スターになりたいとかそんなん無い、ただ音楽が好きな好青年だったんだって。
そんな彼の人生が、ルキノ・ヴィスコンティ神の手によって大きく捻じ曲げられてしまう。

この映画を見れば"芸術"とか"業界"ってモノにいささか吐き気を催してしまうでしょう。
権威ってのは本当に恐怖ですか。
彼はまさしく映画業界の権威、いや、いっそのこと「映画」の餌食となった犠牲者に映ります。
彼の思春期そのほとんどが、大人のオモチャとして消費されてしまう。
むごいったらありません。
その加害者として日本という国も現れてきます。どひゃ〜他人事ちゃうか〜。

後半はビョルンさんの血縁にまつわる事情を、割と切り込んで迫っていきます。
彼の抱えたトラウマとその犠牲に、彼自身が真正面から向き合おうとする様子は格好よかった。

ミッドサマーに出演していますが、次見る時はそのシーンの印象がちょっとかわりそうです。