名波ジャパン10

ワース 命の値段の名波ジャパン10のレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
4.1
9.11同時多発テロの7,000人にのぼる犠牲者の遺族に対する政府補償プログラムを題材とした事実に基づく作品。遺族とプログラム推進メンバー(特別管理人受託法律事務所)との面談シーンはさながらドキュメンタリー映像で、遺族一人ひとりの人間模様が生々しく描かれ、胸が締めつけられます。一方で、補償プログラムの適正な運用の為に矛盾は感じながらも冷徹な計算式と法の規定に基づいての補償額提示を行わざるを得ないプログラム推進メンバーの心の葛藤の描き方も見事です。そもそもこのプログラムが米国の基幹産業である航空業界への集団訴訟提起の阻止を目的としている点は冒頭説明がなされますが、この点の深掘りをもう少し欲しかったのと低迷していた補償受入れ者の割合が急増に転じるきっかけが劇的さに欠けていたのが残念ではあります。現実はそれほど劇的なものではないということでしょうが。