柊

ワース 命の値段の柊のレビュー・感想・評価

ワース 命の値段(2019年製作の映画)
3.6
9.11をこれまでは全く違う視点から捉えた作品。今も全世界に多分同時配信されたであろう悪夢と思いたいツインタワーの崩壊は私にとっても衝撃以外の何物でもなかった。

さすが訴訟の国アメリカ。被害者があっちゃこっちゃで航空機会社相手に訴訟を起こしていたらそれこそアメリカ経済すら崩壊の危機に直面してしまう。という危惧をいち早く回避するために国が和解金を供出したと言う実話。それをどう分配するかは和解人に一任。それも無償で引き受けたアメリカには珍しい無欲の人のお話。
でも結果的にその後も仕事が途切れる事なく活躍してるらしいので元は十分取れたと見ても良いのか。

そこで問題になるのは命の値段が平等ではないという現実。それを遺族の80%以上に納得させる事。未曾有の出来事で大切な人を失った傷が塞がっていない心にあなたの大切な人の年収はこれくらいだから命の値段はこれこれです。「はいそうですか。ありがとうございます。」と言える人はそういないでしょう。収入の多かった人がそうでないと人と同一にすれば文句も出よう。逆であれば人の命に優劣を付けるのか?という文句が生まれる。結局皆が納得する解決策などお金を提示した時点であり得ないのだ。
そこに気付いたからこその対話。人の心を癒すのはやはり人。損得だけでは人は動かない。
なかなか興味深い話と展開で、悲劇の裏で起こっていたリアルでシビアな物語でした。

それにしても人は死んでしまうとみんな良い人になってしまう。だから裏切られていた現実は見たくも聞きたくもない…いい夫,いい父親で永遠にいて欲しい。でもそうする事により救われない人々もいる。妻が他の子にも保障をと認めたシーンは何だか妙にリアルだったなぁ。

あのテロで犠牲になった人数が7000人?本当にこの数字は正しいのでしょうか?
柊