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帰らない日曜日のAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

帰らない日曜日(2021年製作の映画)
4.5
【書込み中】
第1次世界大戦後のイギリスの片田舎、大豪邸に暮す3つの舞台に暮す家族とそこに住込みで働くメイド達。
初夏のように暖かな3月の日曜日。その日は、イギリス中のメイドが年に一度の里帰りを許される〈母の日〉。けれどニヴン家で働く孤児院育ちのジェーン(オデッサ・ヤング)に帰る家はなかった。そんな彼女のもとへ、秘密の関係を続ける近隣のシェリンガム家の跡継ぎであるポール(ジョシュ・オコナー)から、「11時に正面玄関へ」という誘いが舞い込む…。
(公式HPより抜粋)

生涯忘れられない一日。
名家の子息とメイドの禁じられた逢瀬を描いたラブストーリーという紹介のされ方をしているが、
生涯忘れられないある一日《母の日》を中心に複雑に時制を行き来しながら、かつてメイドだった主人公ジェーンが一人の人間として主体的に人生を獲得していく様を描く大河ドラマでもあった。

名家の子息同士の縁組の為に、ジェーンとは今日が最後の逢瀬と決心したポールが去り際に見せるどこまでも切ない作り笑顔。
母の日に帰って来る息子達を戦争でなくしたニムズ夫人の、生気を失った目。(《母の日》という設定が効いている!!この表情のニュアンスを最大限に出せるのは確かにオリビア・コールマンかも知れない。的確なキャスティング)

対して、一人残されたジェーンがシェリンガム家の豪邸を裸のままで歩きまわる姿が印象的。健康的でしなやかで軽やか。ポールの心の奥に触れようとするように、邸宅にマーキングするように、好奇心旺盛な動物が見知らぬ土地を探検するように。

生まれつきの身分による上下関係と、一個人の幸せとは関係ない。寧ろ天涯孤独のジェーンには失うもの(人間関係も、知識も、財産も)が無く、ゼロから何かを獲得していくだけの人生の潔さ・強さを強調される。
英国が舞台の一見、古風な文芸作品である本作に、力強いをもたらしている気がする。 
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