イギリスのお屋敷や風景がとても美しくて癒された。こういう所にいつか行ってみたいな~。そして『エンパイア・オブ・ライト』では性的関係を強いる上司と部下だったコリン・ファースとオリヴィア・コールマンが夫婦役というのも嬉しかった。ここでも、オリヴィア・コールマンの熱演が光る。最初に映った顔が目が虚ろで、心に傷を抱えているんだろうなと一目で想像がついた。
メイドが1年に1度休暇をもらって実家に帰れる母の日、孤児のジェーンは秘密の関係にあるポールのお屋敷へ逢瀬に向かった。このジェーンにとって重大な1日にフォーカスを当てつつ、その前やかなり先の未来に話は飛んで、行ったり来たり。それに慣れるまで少し時間がかかったけれど、この話の世界観が好きなので、それほど気にならずに観ていられた。
どんなに着飾ったり、美味しいものを食べたり、明るい話題をしても、戦争で亡くなった息子たちのことは忘れられない。生き残ったポールとエマの婚約祝いをしようとしても、本人たちでさえ乗り気ではなく……ポールが本音を言える相手はジェーンたった一人なのだから。
2人の息子を失ったクラリー(オリヴィア・コールマン)が孤児のジェーンに、生まれながらに失う人がいない人が羨ましい。それはあなたの強みだと言うシーンがとても印象的。孤児と聞くと、ステレオタイプ的にかわいそうだという思いを抱いてしまうけれど、考えようによってはそうなのかもしれない。というか、クラリーだからこそ説得力を持って言える台詞だ。この言葉もジェーンのその後の人生に影響を与えている気がした。
単なる身分違いの恋愛物語にとどまらないストーリーで、観て良かったと思うし、出来ればスクリーンで美しいお屋敷や風景を観たかった。