幸せのさちこ

ちょっと思い出しただけの幸せのさちこのネタバレレビュー・内容・結末

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

葉と照生の恋愛は、
出会ってから付き合うまで一年、
付き合ってから(結局しなかった)プロポーズまで一年。

どんな関係?と
聞かずにはいられないほどのもどかしい態度に葉がしびれを切らして付き合い始めた。

恋人として迎える初めての照生の誕生日は、葉がケーキを食べて、照生が食べたのは上に乗ったいちごだけ。

2度目の誕生日は、葉が押し付けるように渡したケーキを照生がベンチで1人で食べた。

葉の旦那さんは、照生とは真逆の人。

出会ったその日に一線を越えて、
2年後にはもう3人家族。
展開を先に進めたのもきっと旦那さん。

たとえ明け方でも、葉がケーキを買ってくれば一緒に食べようと声をかける。

怪我をしてダンスが出来なくなった時、「この先どうするのか決めてから会いたかった」照生に対して、旦那さんは家で子育てをしている。

真逆だから好きになったのか、
真逆の中に似ている部分があったのか、
どちらなのだろう。

どちらにしても、
今の葉にとって照生はもう
ただの昔の恋人なのだな、と
朝日を見る表情が伝えていた。

この映画はラストシーン以外ずっと
葉の視点で描かれている。

葉は照生を見たから「ちょっと思い出した」のだけれど、照生は葉のタクシーを見ただけ。

あの頃とは違う大きな黒いタクシーを見て葉を思い出した照生は、きっと、街中のタクシーを見ても葉を思い出すことがあるのだろうし、今ももんじゃと同じ部屋で同じ朝のストレッチを繰り返している。

それでも照生は1年前よりも大きな舞台で照明の仕事をしていて、間違いなく前に進んでいる。