シャチ状球体

モンタナ・ストーリーのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

モンタナ・ストーリー(2021年製作の映画)
4.3
親がいなくなるというのは、ただ人が一人いなくなるだけではない。持っていた土地(この映画の場合は農場)の行方を決めなければいけないし、自ずと人生を振り返ることになる。

モンタナの広大な土地に帰ってきた2人のきょうだいが気まずい再会をするだけの話だけど、『メイジーの瞳』の監督なので(?)、自然と人間の善性を組み合わせて受容と哲学に溢れたドラマを展開してくれる。

暴力的だった父親も寝たきりで意識が無くなってしまえばすべて過去のものになってしまうというか、人間の行動はきっかけと行為を許容する空間によって形作られているのだと思えたり。
ニューヨークの真ん中で暴力を振るうのと辺りに何もない農場で暴力を振るうのはどちらが容易いのか、そして馬を飼うのはどちらが……。もちろん何もないところから欲求が生まれるわけもないので、その環境に何が足りていて何がそうでないのかに人間は大きな影響を受けていると思う。

劇的なことは殆ど起こらない。だからこそ逆にこれまでエリンとカルが辿ってきた人生の重みが想像でき、少しはマシな未来に向かっていくような希望がある。

これみたいに、今まで知らなかった良作がきっとこの世には星の数ほどあるよね……。
シャチ状球体

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