にっこりテリー

私は白鳥のにっこりテリーのレビュー・感想・評価

私は白鳥(2021年製作の映画)
3.5
クレイジージャーニーをかつて有したあのTBSは東大全共闘といい、狂気を孕んだドキュメンタリーをドロップする傾向があるのか。兎に角NHKや民法他局ドキュメンタリーとは、抉る対象の変態さが異質である。 
 さて本作、ナレーションはあの天海祐希、主題歌は石崎ひゅーいと、メジャー大作と相違ない豪華な「側」を設定しているが、その中身は極寒の北陸で家庭もなく孤独に生きる還暦手前のまさに「オジサン」の日々を密着したもの。
 蓋を開けてみると、人生最後の拠り所を一方的に渡り鳥に求めコミュニケーションを図らんとする鬼気迫るオッサンのPOVホラーとも言うべきオッサンの日々が描かれる。 
「私の心のスキマは白鳥の形をしている」
「白鳥の気持ちで胸肉を鍛える筋トレをする」
「私は白鳥だ」
思い詰めた初老の行動力は一歩踏み外せば大事になりかねない異様さを孕んでいる!

そんなヒネた見方をしているのは私だけだと思うが、少なくとも冒頭数分で、オッサンの明るい、優しい人柄がギリヤバい匂いを発する瞬間が早速登場し、笑える事は事実だ。

 翼の折れた白鳥とそれに自己を投影する孤独なオッサンの交流。その言葉だけでは表せない人間のリアルがそこに。

 
にっこりテリー

にっこりテリー