傑作とまでは言わないがソ連崩壊後の社会への風刺がかなり効いたガールミーツボーイで少しファンタジーな佳作。どうしても「僕はモスクワを歩く」を想起する。格差に賄賂、空き巣、マンホールの窃盗そして貧困…などあっけらかんと描かれるその迫力！ディテールからして本物は違うというか。

話は病気の母をもつ文房具店員ナースチャが、母にボーイフレンドでも連れてきなさいと急かされて街を彷徨するが、とある老婆を助けたところ二つ望みを叶えると言われる…というもの。殴られ屋（？）の少年との関係性が大変魅力的に描かれていて、彼彼女を応援したくなったらそれはもうこの映画の勝利でしょう。

美人になるという望みは叶えられるのだが、我々からみるとどっちも美人じゃね？感。但し女性視点だと芋女感を端々に主張してるようなのだ。履きなれないハイヒールに抜けきらない生活臭。

ここから彼女はあれよあれよとステップアップしていきそうになるのだが、ボロボロな庶民の生活感とセレブやハイソな輩どもの格差に目眩がする。区長に見初められ区長の権限でボルシチ用のビーツを手に入れる件なんかも順番絶対守ってないよね。

シンプルな話にこれだけ風刺を詰め込んで、面白い優れた映画だと思いました。

お定まりのシンデレラストーリーなのでいかに女性を魅力的に演出できるかが勝負どころだが、その点ダネリアは女性の演出が得意なので本領発揮というところ。ロシア1の女性から陥落したモブのビンタまで見事なもんだ。
肝心のヒロインがすっぴんの時点で可愛いので変貌ぶりは弱いが。

物語のターニングポイントたる橋を冒頭に老婆の視点から見せ、序盤20分頃の男と別れた次ショットで老婆が横切る。この奇妙な違和感のある問いかけをしながら横切るフレームインが実に魅力的。

【2025/23(14)】