1976年市川崑監督作の2021年４Kリマスター版。何度も見た名作も新鮮な気持ちに見ることができた。菊人形の首を発見する石坂の驚愕の顔、高峰の顔にかかる血飛沫、名場面が改めて鮮烈。業界の風雲児角川春樹が始めた映画製作第１号は、オールキャストで、東京オリンピックの記録映画以降、ヒット作に恵まれなかった市川崑の再生の1作となった。佐兵衛は巨大な財をなす一方で、愛する人と結婚できない自らの運命を呪い、自らの血をひくものが同士討ちで死んでいくよう遺言を残した。それを実行していく犯人。横溝の原作は推理小説というより伝奇小説で、金田一は最後にもつれた糸を明らかにするだけ、誰も救えない哀れな探偵だが、石坂浩二はユーモラスな探偵像で金田一のイメージを作った。
