ククルス・ドアンという男が、戦争孤児の子供たちを無人島で一機のザクだけで守っていたというお話。
ククルス・ドアンの島はガンダムの中でも伝説的なエピソード。
作画崩壊でも話題になるが、独立したエピソードであるため、劇場版三部作含め「除外」されることが多かった。
そして今回除外され続けたエピソードが満を持して2時間の長尺で描かれる。
正直期待外れな印象を受けた。
満を持した割には描きたいことや伝えたいことが無く、これであれば無理して作る必要が無かったように思える。
安彦良和監督のインタビューを読んでいると、「生活芝居」を充実させたいという意向があるそうで。
たしかに戦争孤児の子供たちとククルス・ドアンの生活の部分は良く描けていた。
水源はどうしているのか、電気の問題、食料の問題、子供同士の触れ合いなど。
描きすぎているほどに、描いていた。全体の6割がそうだったのでは無いだろうか。
しかし、私が観たいのはそこだけでは無いのだ。
ククルス・ドアンが軍隊から抜けた葛藤、戦争から抜け出したくても己の闘争本能から逃れられていないという呪縛。
本来憎むべきドアンと戦争孤児とがどのように家族になっていき、作中でもどのように成長していくのか。
戦火をあげて、戦争にどっぷり浸かってしまったアムロが、戦争以外の道があるという新たな目線をどのように見つけていくのか。
アクション部分にしてもそうだ。
今回はわざわざドアンを憎むサザンクロス隊という新キャラを作り、軍隊で攻めてくるようにしている。
アニメではザク対ザク、2機のモビルスーツの戦闘だけだったのに、今回は高性能の軍隊に移り変わる。
そしてアムロのガンダムやガンキャノンといった味方部隊も充実している。
これは激しい大群戦が繰り広げられると期待するしかない!という状況。
しかし、上記であげたようなシーンは一切無かった。
非常に残念である。
30分一話のアニメだけでは描くことが出来なかった心情変化や奥深い考察、激しい戦闘シーンを私は求めていた。
それらが一切除外され、「生活芝居」を永遠と見せられたので、私は期待外れという印象となった。
子供たちが無人島で生活しており和気あいあいとしているシーンを渇望している人は是非観てくださいと思う作品。