影屋れい

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島の影屋れいのレビュー・感想・評価

4.5
『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。映画館でのレビューとしては実に2年ぶりですか。どうでも良い情報ですが。『シン・ウルトラマン』も『トップガン マーヴェリック』も観ましたが先ずはこちらを。
『ククルス・ドアンの島』は当時のガンダム放送話としては異形と言いますか、単に激しい作画崩壊の回として長年《ネタバナシ》とされて揶揄されて来ました。それが永い時を経て汚名返上とばかりにリファインされての帰還。
今作で《崩壊》として描かれてきた《ドアン・ザク》は崩壊の風味を残しつつまさしく《異形》として描かれ、新しいザクとして確立されました。まさか只の作画崩壊がここまで格好良く描かれることになるとは予想もしませんでした。それに伴いメカ…MS戦闘の格好良さ…そしてその恐ろしさ、恐怖は格別の表現。それに相反するかのような島でのドアンが保護する少年少女たちの牧歌的な生活。それが否が応でも《戦争》をじっとりと連想させます。例えば、ドアンの帽子。それはどうにも《日本兵》を思い起こさせます。そして舞台も。硫黄島。沖縄戦。映画…作品として犠牲者が出ていないにも拘わらず心に《戦争》の事実と現実が心に浮かんでしまいます。
数多くの《ガンダム》を観てきたつもりですが、今作品ほど戦争を意識せざるを得ない《ガンダム》は無いのではないかと。

そして、《異形》のドアン・ザクの恐ろしさもありましたが、何よりも恐ろしかったのは《ガンダム》でした。あれは《連邦の白いヤツ》ではなく《連邦の白い悪魔》。その姿に私はただただ恐怖しました…。
影屋れい

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