ハレルヤ

キリング・オブ・ケネス・チェンバレンのハレルヤのレビュー・感想・評価

3.9
心臓が悪く、精神に病を抱えた元海兵隊の黒人男性ケネス・チェンバレン。医療用通報装置を誤作動させてしまった事で、警官が駆けつける。それから1時間半後、ケネスは警官に殺害されてしまう。何故そのような事態になったのか。衝撃的な事件をリアルタイムで描いた実話サスペンス。

9月15日公開予定の作品。オンライン試写会で鑑賞しました。この驚愕の事件。リアルタイム手法。製作総指揮はモーガン・フリーマン。かなり興味を持って臨みましたが、強烈な胸糞悪さが突き抜ける内容でした。

ある日の早朝。医療用通報装置の誤作動で警官が安否確認のためにケネスの家を訪問する。「誤作動だから帰ってくれ」というケネスだが、警官は「ドアを開けて無事を確認させてほしい」と言う。最初はそんな簡単なやり取りのはずだった。

しかし精神が落ち着かないケネスはドアを開けようとしない。それに不信感を抱いた警察はケネスが誰か家の中に監禁しているのか?薬物を所持してるのではないか?と疑念を募らせる。

そこから事態は徐々にエスカレート。痺れを切らした警官も乱暴になり、差別的な暴言を吐いたり、ドアを破壊しようとする。そんな状況下でケネスも完全に冷静さを失い、反撃しようとする。そして最悪の結末へとなだれ込んでいく。

結果論だけど最初にケネスがサッとドアを開けていたら…とか、警察側もケネスの症状を理解して引き上げたら…とか色んなケースが頭に浮かび、どれか少しでも当てはまったらこんな事件は避けられたと思うと、やはりやるせない気持ちになりました。

警察側は仕事だから安否確認はちゃんとしないといけないというのは理解できます。でも中盤からの過激な行動は完全に越権で違法行為。元々差別意識の強い警官もいた事によって、乱暴な行動に歯止めが効かなくなり、大勢を巻き込んだ大事件へと発展。アメリカの人種問題にも踏み込んだ形になっています。

時間が進むたびに強くなる緊張感。手に汗握るような嫌な気分がどんどん進んでいく。劇場で見るとこの緊張感はより一層味わえる気がしましたね。

嫌な気分になる内容ながら、新人警官のロッシが本作の良心。ケネスに理解を示し、窓側から落ち着いた口調でケネスを説得しようとする姿を見て、「警官が皆こうだったら…」と思わざるを得ません。

エンドクレジットでは実際の当時の音声が流れます。それだけでもケネスの悲痛な状況が伝わってきました。最近見た映画の中でもトップクラスの緊張を感じた作品。事実を取り扱いながら社会的なメッセージも感じ取れる仕上がりになっています。
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