渡辺静

レイジング・ファイアの渡辺静のネタバレレビュー・内容・結末

レイジング・ファイア(2021年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

正義感あふれる警察官チョンは、麻薬組織の壊滅作戦中に謎の仮面をかぶった集団に襲撃され、仲間を殺されてしまう。
やがてチョンは、事件の黒幕が3年前に警察組織にはめられ投獄された、元同僚で弟分のンゴウであることを知る。

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じつはイップマン以来のドニーイェン作品。

話の筋はシンプルで取り立てていうことはない。
一方、アクションの画場面は目を見張るものがあり、カーチェイスや、市街での銃撃戦、ラスト付近の肉弾戦(何度か、本気で殴ってね…?というシーンがあった。ハンマーでガンガン!ってやるところとかすごい!)など、飽きずに観ることができた。

キャラクターの立て方は、ちょっと悪い意味で漫画ぽすぎるのが気になった。

そしてなにより引っかかったのは、黒幕ンゴウ組の動機作りのシーン。

①ンゴウ組は、上司に「手段は問わない、責任はとる」と言われ、犯人を拷問するという手段を使ってしまった←わかる
②それにより、人質の場所を吐かせることができた←わかる
③人質は無事救出。その上で、犯人を暴行し、殺してしまった←これがわからん!

「上層部に指示されてやったのに…」と恨みが成立するのは②までで、③は余計な暴力じゃないか?
これじゃあ、本作を支える犯人グループの動機がぶれてしまう。
『拷問の末、瀕死状態で人質の居場所を吐かせ事件は解決したが、拷問の影響で死んでしまった』という展開にしないといけないのでは?

さらに、ンゴウ組→主人公への恨みがよくわからない。
主人公は「真実を語った(誠実)」だけであり、それは上司の「自分で指示したのにしらばっくれた(不誠実)」とはまるっきり違う。まして偽証が許されない裁判においては。
ンゴウ組は「俺たちを庇ってくれないなんてひどい!」と主人公を逆恨みしている駄々っ子に見えるし、
ここでも「嘘をつかれたから許せない」という怒りの動機がぶれてしまう。

上記の動機作りの失敗によって、
全編にわたって黒幕グループの言動が軽く見えてしまった。

監督の遺作になってしまったとのことで、謹んでご冥福をお祈りいたします。
渡辺静

渡辺静