Joe

猫は逃げたのJoeのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
4.3
洒落たマンガのようです。

作り手への信頼感を再確認しました。男女関係のもつれを楽しく笑える味付けで届けてくれています。根っからの悪人とか、バイオレンスは全くないとはいえ、みんないい人かといえば、裏切るし、軽犯罪やっちゃうし、そもそもパートナーを傷つけるし。青年誌に載っているマンガのようなトーン。

素晴らしさがニジみ出ているのは、痴話げんかを見せられている感じが全くないこと。出来事のひとつひとつ、登場人物の振る舞いやアクションのひとつひとつが「おかしく」て、「おもしろい」んです。だから、実際は会話劇だったとしても、極めてそんな風に見られないような仕掛けがあります。と言うよりも、会話劇じゃないと私は思って見ています。

この作品がソツなく「うまい」のは、同一人物がパートナーを裏切っているシーンでも、「ん? 同一人物か? あ! 同一人物だ!」というシーン運びにしてくれていて、これは分かりにくくても、分かりやすくても面白くないという絶妙な映像表現になっているところだと思いました。終始、そんな部分があって、それを「うまいだろ?」と見せつけないあたりを絶賛したいです。

この作品で驚くほど魅力を感じるのは手島実優さん。冒頭で毎熊克哉さんを見つめる表情にやられました。あのお菓子(HARIBO)使って迫るシーン作った人、天才です。

この作品は、結局どういうストーリーだったのかということは重要ではありません。あのとき、あの登場人物は、どんな振る舞いをしたのか、こんなシーンに展開したのか、そこが大事だし、面白い部分だと思います。クライマックスで、関係者が一堂に集まって話をしているのが最高に面白い。しかも、狭い部屋で肩を寄せて。おかしいでしょ?のセンスがここに現れていました。

猫、いいです。
Joe

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