三樹夫

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーの三樹夫のレビュー・感想・評価

3.0
現実世界にいるマリオとルイージが異世界(ゲーム世界?)に飛ばされ、クッパに囚われになったルイージを助けるためピーチやドンキーコングと協力してマリオが頑張るという話。
キャラクターは全員可愛い。ストーリー展開はキノコ王国でチュートリアルがあって、次はコング族の協力を得るためドンキーコングと戦ってと、ゲーム感があり予定調和的で退屈。現実世界でさえないマリオとルイージが異世界に飛ばされた時点で、異世界で成長して帰ってきて現実世界でもヒーローになるみたいな感じなんだろうなと思ったら、ほぼその通りだった。救いなのは本編が約90分なので飽きる前に終わること。クッパのピーチストーカーソングピアノ演奏は笑えると思うが、ギャグは基本的にヌルい。アクションはキャラが勢いよく動くのが良かったし、やっぱり可愛いと思った。
この映画が一番力を入れているのはゲームの再現で、『マリオブラザーズ』は勿論のこと、あっ『ルイージマンション』だ、あっ『マリカー』だと、ゲームみたいという快感というか、これゲームで見たことある快楽を刺激してくる。ただこういうのって、観光地に行ってガイドブックと同じだ~と喜ぶみたいなものなので、楽しさはあると思うが私は虚無的な気持ちにもなった。全体を通してマリオの新作ゲームのトレーラーを長時間に渡って観たみたいな感じ。

この映画の内容よりも、この映画に対する言説が一番目についた。予告編が公開された2022年11月ぐらいから2023年3月ぐらいはポリコレと叩かれていたのに、公開後はこの映画はポリコレじゃないから良いと、たった数か月で歴史修正されたのは本気で唖然とした。
ただし映画公開前にポリコレと叩かれたのは、叩いている奴は気持ち悪いしお前のやってることは映画の中ならラスボスですらないザコ悪役のやることやぞと思うが、言っている内容自体は間違っていない。この映画は誰がどう見たってド直球のポリコレ映画だし。予告編ではピーチとキノピオが戦いに赴くカットが使われており、ピーチが自立した戦う女性という分かりやすいぐらいポリコレだ。
しかし奇妙な展開を見せるのが公開後で、この映画はポリコレじゃないから良いという言説が溢れており、反論としてポリコレ要素あるだろと当然指摘されているが、それに対するエクストリーム擁護として、この映画はポリコレじゃない、だってピーチは『マリオUSA』の時から戦っているしというので、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』はポリコレじゃない理論が固まった。一応、公開前のポリコレと叩かれていた時点で『マリオUSA』の時に既にピーチは戦っているからポリコレじゃないという意見はチラホラあったが、百歩譲ってもそれってゲームの時点でマリオはポリコレ配慮してたポリコレ作品ってことになるんじゃないの。

今のなんか流行ってる気持ち悪いやつとして、日本の漫画やアニメはポリコレ汚染されていないから外国で人気という、オタク版日本スゴイがある。こういうオタク版日本スゴイは、10年ほど前は『ライオンキング』は『ジャングル大帝』のパクリ、『アトランティス失われた帝国』は『ナディア』のパクりというのが大人気だった。確かに『ライオンキング』と『アトランティス失われた帝国』はパクっていると言うことができると思うが、一方で日本の作品がどんだけ外国のやつパクってると思ってるのとなる。
庵野はサンプリング手法を用いるのが特徴で、『トップをねらえ』は『トップガン』や『宇宙の戦士』の要素があったし、手塚治虫も元々がディズニーの影響大だし、『ブラックジャック』でも洋画元ネタの話あったりで、どう考えてもパクり話で気持ちよくなるのは日本が不利。後あったのは、『ターミネーター2』の液体金属は『寄生獣』のパクりというのだが、いや『寄生獣』も『遊星からの物体X』を参考にしてるやんと、正直こいつら全然作品とか観てないんじゃないかと思っていた。
『ガンダム』は『宇宙の戦士』と『スター・ウォーズ』を参考にしているし、宮崎駿は『王と鳥』から『カリオストロの城』を、『デューン』から『ナウシカ』をサンプリングして作っているし、『ゴジラ』も元ネタは『原子怪獣現わる』だし、『大長編ドラえもん』にもどう考えても洋画が元ネタのやつあるし(F先生が自分からこれが元ネタですと言っているのもある)、『PSYCHO-PASS』は『マイノリティ・リポート』だし、『ボトムズ』は『ブレードランナー』、『地獄の黙示録』、『デューン』、『2001年宇宙の旅』の欲張りセットだし、『北斗の拳』は『マッドマックス』やブルース・リーなど元ネタが大量にある。
漫画やアニメだけでなく「Take Good Care Of My Heart」→「ロンリー・チャップリン」、「Material Girl」→「ラブ イズ Cash」、「While My Guitar Gently Weeps」→「ガリアン・ワールド」、「Maniac(『フラッシュダンス』のやつ)」→「そのままの君でいて(『パトレイバー』のやつ)」などどう考えてもという邦楽もあるし、洋画や洋ドラが元ネタじゃないのというドラマもある(日本ドラマ 洋ドラ パクりとかで検索すればたくさん出てくる)。私は『あぶない刑事』の当時スタッフだった人に、「元ネタは『マイアミ・バイス』ですよね?」と訊いたことがあるが「そうです」と言っていた。
作品なんて色々なものから影響を受けて作られるだろうから、パクりだから駄目とは思っていないが、『ライオンキング』は『ジャングル大帝』のパクり、『アトランティス失われた帝国』は『ナディア』のパクりとイキっていた奴は心の底からバカにしていた。つーか『ジャングル大帝』も『ナディア』もお前が作ったやつじゃないやんと思っていた。

さすがに『ライオンキング』と『アトランティス失われた帝国』はパクりでイキるのはもう無理と思ったのか、最近は日本の漫画やアニメはポリコレ汚染されていないから外国で人気というのに変わった。ただこれも、この映画みたいな分かりやすいポリコレ映画でも楽しんでいたりで、ポリコレ作品はクソ、ポリコレじゃない作品は面白いという結論ありきがあって、自分が面白いと思った作品はポリコレじゃない、面白くないと思った作品はポリコレというように雑に分けているだけじゃないのと思う。
『スパイダーバース』はポリコレとあまり叩かれないし、『ワイスピ』もあんなにダイバーシティ盛り盛りなのにポリコレと言われない。結局自分が面白いと思った作品はポリコレだろうが何だっていいだけ。ちなみに『スパイダーバース』は主人公が黒人の原作もあるからポリコレではないらしい。つか外国だと日本の漫画やアニメより『スパイダーバース』や『ズートピア』の方が人気だと思う。2023年秋ぐらいに『ズートピア2』のテスト試写会が行われて評判が良かったみたいだが、ポリコレ入れるのはやめてほしいとかいう日本人のポストがXにいくつかあり、当然ツッコまれていた。
この映画は宮本茂が、「ゲームでは分かり易くするために助けられる役割だった」のが「ピーチにもたくましさや姫としての責任感を与えたい」という考えから“戦うピーチ”が誕生したと言っており、映画の内容と照らし合わせてもポリコレ要素あると思うが、ポリコレじゃない理論は一体なんなんだろ。後、この映画を制作してるのイルミネーションで外国の会社なのに日本スゴイでイキれるのはよく分からん。
三樹夫

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