Kz氏

弟とアンドロイドと僕のKz氏のレビュー・感想・評価

弟とアンドロイドと僕(2020年製作の映画)
3.5
産婦人科の廃病院で「もう一人の自分」を作っているロボット工学者は、他者を拒絶している。死にゆく父親も、腹違いの弟も、妊娠しているかに思える少女も、結局彼の中には存在していない。ずーっと雨が降っている。
「究極の孤独」がモチーフで、「これを撮らなければ自分は先に進めない」という覚悟で取り組んだ作品だそうだ。

全作品を見ているわけではないけれど、阪本順治に何が起きているのだろう。
『顔』や『団地』や『大鹿村騒動記』の「コメディ」から、『KT』や『亡国のイージス』や『闇の子供たち』の「社会派」、また、『座頭市THE LAST』や『傷だらけの天使』や『新・仁義なき戦い』のリブート「娯楽作」、みな「 」を付けたくなってしまうのだけど、の振れ幅はあるものの、デビュー作『どついたるねん』に収斂してしまう。男性映画という死語を使いたくなる作家、というのが私のイメージ。内省・象徴・心象というような言葉からは遠い存在だったのだけど。
しばらくぶりに、追いかけてみたくなった。
Kz氏

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