しん

義足のボクサー GENSAN PUNCHのしんのレビュー・感想・評価

義足のボクサー GENSAN PUNCH(2021年製作の映画)
3.3
明るさと暗さが同居する、不思議な感覚にさせられる作品でした。事前知識がなかったので、本作が実話ベースであることは最後に知りました。元の話を知っていればもっと楽しめたのかなと思いつつ、知らなくても十分に面白かったです。

義足をつけているがゆえに日本でプロライセンスが取れない主人公が、フィリピンでプロになろうとする話です。そう書くとサクセスストーリー感が出ますが、本作は単純なサクセスストーリーではありません。ボクシングに内在する危険、矛盾、薄暗さを描きながら、それでも熱狂してしまうボクサーや周囲の人々の人間らしさをスクリーンに映し出しています。

東南アジアの「暑い」雰囲気が好きな人間としては、その感じがふんだんに盛り込まれていたのも推しポイントです。まさにホットスポットなフィリピンに引き寄せられる人々とそこでの人間ドラマが魅力的です。下手な英語でなんとかコミュニケーションを取ろうとし、伝わってるのかわからない言葉に納得し、どっちが勝っても熱狂する。そんな市井の人々が愛おしいです。エキストラをたくさん使うことで、生感が出てたのもよかったですね。

パンチが一発入るかどうかで人生が変わるボクサーたちの不安定さと葛藤、そして魅力が伝わってくる、ハートフルじゃないけど心揺さぶられる作品でした。おすすめです。
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