マグナム本田と14人の悪魔

リコリス・ピザのマグナム本田と14人の悪魔のレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
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みんな少し不幸でまぬけ。この点においてだけは世界は平等であるなあ、とPTA作品を観るといつも思います。

事前に『ブギーナイツ』を観かえしてたんですが、両作ともウォーターベッドが出てきたり、「イタリア製のナイロン」「アラビア製のビニール」というセリフ、老人の顔ドアップ(今回一番笑ったのは俳優エージェントのおばさん)、愛の成就しないゲイ、金持ちの家からガス欠の車で坂を下る(『ブギーナイツ』では前向きに、本作ではバック、明らかに意味がある)、といった共通点があるのは単に70年代を描いているからってだけではなくて、PTAの心に刻まれたものがあるのだろうなと。

警察署から二人走り出したシーンで自分の脳内を快楽物質が駆け巡るのを感じて、軽くパニックに陥りました(不快に感じるかもしれませんが、一番近いのは精通の時の感覚です)。白い宇宙船の中を闊歩する黒い甲冑の男、スーツをはだけると赤青黄色のコスチュームに変身しふわりと浮き上がる好青年、階段を登り切って腕を突き上げるボクサー、これまで様々な映画で感動したシーンは数あれど、こんな体験は初めてでした。