月うさぎ

リコリス・ピザの月うさぎのレビュー・感想・評価

リコリス・ピザ(2021年製作の映画)
3.3
すみません。勝手に音楽映画と勘違いしてました。タイトルのリコリス・ピザがレコード店の名前で、LP(レコード)板を意味していると聞いたせいです。そして個人的にはトレイラーにBowieのLIFE ON MARSが使われていたせいです。ズルい…。

ロマンチック・ラブコメです。くっつきそうでくっつかないをあれこれやってる青春映画です。音楽はほぼ関係なし。監督として選曲に狙いはあると思いますが、石油ショックの街の風景にLIFE ON MARSは意味不明でしたね。二人でウォーターベッドで寄り添うのにWINGSのLET ME ROLL ITも不思議だったし。

時代は1973年。
この年代にノスタルジーを感じられる人かどうか?
仮にこの時代を知らなくとも、例えばOnce Upon a Time in Americaのように、映画の力(映像と音楽と演技と美術の総力)でそれを感じさせることは可能です。
しかし、この映画では無理。作り込んだ街並みをそもそも知らないし何のイメージも持ってないんだもの。
実際にあった小ネタの積み上げで構築した時代感は、やはり元ネタを知らないと意味をなさないのです。
例えば映画館の前のシーンでは「007 死ぬのは奴らだ」(Live and Let Die)が上映されていますが、1973年に公開された事を当時観て知っている人でないとピンときませんよね?
実在人物がモデルになっていたり、実名で登場したりしているのですが、知らなければそれまでです。
監督の生まれ育った街を舞台に実際の知人を主人公の少年にしたそうで、かなりパーソナルな要素が多い映画です。
主演二人の存在感は抜群ですし、エンディングも爽やかな気持ちになれます。
でもこの映画の狙ってる面白さは私には半分も伝わらなかったですね。残念ながら。アカデミー賞にノミネートされた事もよくわかりませんでした。
70年代って事にすればヘイズコードからも今のような社会的規制からもフリーになる。例えばガキがタバコを吸ってもOKとか?
映画のうちわネタで業界の人が盛り上がれる?
ううう。微妙に古くて知らなすぎて降参。
ベトナム戦争もましてや朝鮮戦争も時代のリアルではないし。この頃のカルフォルニアって本当に何も知らないんだなーという事をこの映画で知りました。
ピンボール禁止法なんてのがあった事も知らなかったし〜!!

ヒロインのアラナは本名そのままアラナとして登場、だけでない。一家総出演でみんな本名で出ている!監督と事実縁のあった家族らしい。
これら映画の裏情報をあーだこーだいう楽しみはあるけれど、私個人的には映画はそれ単独で鑑賞する事を前提にして欲しい派です。
「バビロン」なども映画界事情を知る、知らないで理解度が異なりますね。でもあれは話が大きくて、少なくとも楽屋落ちではない。それに比べると…と、思っちゃいます。
なんで普通の青春ものを被せなかったんだろう?ビジネスも手がけるませた15歳の男の子と25歳(もしかしたら28歳かも)のユダヤ教の女性という難しいカップルに、なんでしたんだろう?観てるこっちとしては余計雑念が入ると思うんだけど…。政治が絡んできたり、ちょっと引いちゃって現実を考えざるを得ない場面展開が多い気がするんですが。

この二人、よく走ってました。こういう考えなくていいシーンが最も素敵でした。
月うさぎ

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