kit

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版のkitのネタバレレビュー・内容・結末

-

このレビューはネタバレを含みます

・107歩のシーン、
真っ直ぐで無垢で、光を纏って妖精のような善の人が、心のままに生きるだけでどうしてこんなに辛くて苦しい思いをしなくてはいけないのか、なぜセルマが罰を受け入れなければいけないのか、そんな世界が嫌で仕方なくて、いやだいやだいやだって思いながら嗚咽を上げながら泣いた
セルマの瞳、後半になればなるほど澄んで綺麗になっていくように見えて、そのうつくしさでまた涙が出た
絞首台でおもむろに息子に歌うあの声の清らかさよ
聖人の奇跡を行うみたいだったじゃないの

・もう全て見た、の歌、
わたしは、視力を失うことを惜しいと思わないようにするために自分に言い聞かせているように感じたのだけど(酸っぱい葡萄みたいな)、他の人はどう捉えたんだろう

・今回、館で観られてよかったな。
5年前に一度だけ観てから、ことあるごとに思い出しては、未だに見返せていなかった作品。初回よりはいい印象。セルマがどこまでも息子への愛と無垢な誠実さを貫いたこと、隣人の寄り添いがあったこと、その二つがいい印象になった理由。

・落ち込んだ所、
初見では完全に悪だと思っていた警官夫婦は、ただただ悪意の塊というわけではなくて、弱さを孕んだ人だったということ。
積極的に他人を害する気持ちを持ってはいなくても、余裕のない崖っぷちに立った時に人は、弱さゆえ周りを傷つけてしまうこともあるということ。私だって誰だって、多くの人が完璧な善人ではないし弱さもたくさん持っているので、落ち込んだ。

・警官の留めを指すところ、
なんとかこの悪夢を一区切り終わらせるべく勇気を振り絞って叩きつけた、みたいに捉えていたけれど
他の人の感想も聞いたら、報復の気持ちも含まれていないとは限らない、と思い至り戦慄 そうか確かに…
また隣人の親切も、ほんとうに純粋な親切心だけとは限らないかもとか、セルマの自己中心も過ぎるとか、人の感想を聞いていて後から発見、納得
(感想交流は大切ですね…)

・この映画のどこが好きなのか?
セルマの無垢さ、だと思う
それが失われてほしくない、守られてほしい、尊びたい、と思えること
kit

kit