たらお

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版のたらおのレビュー・感想・評価

4.0
病気で視力を失いつつある主人公セルマが不幸に見舞われながらも逃げ出さず、歌うことで立ち向かうお話。
鬱映画とは耳にしていましたが、噂にたがわぬヘビィな作品でした。
徐々に見えなくなってくる目、仕事の失敗、信頼していた人の裏切り、そして迫る身の破滅と波瀾万丈の展開を見せるストーリー。
まさかとは思うけど……という予想は悉く的中。
容赦なく降りかかる悲劇らがセルマを追い詰めていきます。観ていて頼むから救われて欲しいと強く願いましたが、叶わず。ラストシーン、ただ息を呑み、寂寥感に苛まれました。

歌が大好きで、歌うことが辛い現実の救いでもあったセルマですが、それすらも奪われそうになっていて観ていて目頭が熱くなりました。
絶望の中に僅かでも光があれば……。
時折空想シーン(ミュージカル)が出て来ますが、これが一部でも現実であったらと願ってしまって仕方ない。
舞台の稽古や裁判所のタップダンスの辺りはとても明るく良いシーンなのですが、だからこそ現実に引き戻された時の落差のダメージが大きいですね。
救いはなかったですが、セルマが決して人や世の中を怨まずに最後まで彼との約束を、沈黙を守ろうとした姿。息子さんを愛する気持ち。最後まで味方でいてくれた友人や看守さん。
そういった人間の心という物の尊さがまばゆく見えました。
たらお

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