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一人と四人のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

一人と四人(2021年製作の映画)
2.6
【ペマ・ツェテンの息子が『ヘイトフル・エイト』を撮っていた件】
スペースで第34回東京国際映画祭作戦会議を開いた際に、フォロワーさんから『一人と四人』の監督はペマ・ツェテンの息子だよと教えてもらった。近年、チベットや中国映画界はジャ・ジャンクーとペマ・ツェテンがサポートに入り、新鋭を育てている風潮がある。第16回大阪アジアン映画祭で上映されたチベット映画『君のための歌』に引き続き、二人が携わっている映画が日本でお披露目となったのだ。ただ、ペマ・ツェテン映画のイメージで観たらタランティーノ映画で思わぬボディーブローを喰らいました。

山小屋を守る男。食料は尽き、硬いパンを食べようとするが硬すぎて投げ捨てる。そしてヤケ酒で時間を潰す。そこへ次から次へと男がやってくる。この中に警察と密猟者がいるらしい。犯人を調べる鍵は、管理人が事件があるたびに記述する日記帳だった。酷寒の地で、手汗握る人狼ゲームが勃発する。

本作は明らかに『ヘイトフル・エイト』の文法に則った作りをしている。次から次へと現れる癖者に対して、味わい深い会話を与え、回想シーンでアクションや虚実曖昧な真実を展開していく。突如現れるアクションは強烈でありスパイスが効いている。タランティーノ味をチベット映画で味わえるとは驚かされる。

一方で、テクニックに溺れている印象が強く、終盤のやたらと多用するスローモーションや早回しは無意味な映画の連動にしか見えず、単なる子供騙しに終わってしまったのが残念だ。

結局は『ヘイトフル・エイト』好きがそれっぽい映画を作ったレベルに留まっていたと言えよう。
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