横山ミィ子

マイスモールランドの横山ミィ子のネタバレレビュー・内容・結末

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

いくつかのレビューで「考えさせられた」「知るきっかけになった」という声が出ていたのは救い。私が日本の入国管理局の実態や、不法滞在とされるの外国人の状況について知ったのは、スリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件や、NHKのドキュメンタリー番組を通してだったが、その冷酷・残虐・非人道的な仕打ちは、この映画からはあまり読み取ることができなかったのは残念に思う。

「法律上、刑罰を課すことは人権侵害であり、その実行のためにはしかるべき手続きが要る」と聞いたことがある。殺人、窃盗、傷害、強姦による罪であっても。そして、「不法滞在者は犯罪者なのだからしょうがない」という声も多い。それであれば、サーリャの父親はどういう罪になるのだろうか?「難民申請が認められず、ビザを失った状態で、娘の進学のために就労していた」それが、どういう不正なのか?サーリャと聡太がお互いに交わした言葉は、監督から受け手へのメッセージでもあったろうーー「しょうがなくないよ」と。そう、しょうがなくない、おかしいのだ、間違っているのだ、日本のシステムは。

結果としてサーリャの父が帰国することで子供たちを救おうとするが、本来ならば、日本のシステムが人道的になることで、彼らが救われねばならなかった。そもそも彼らはどうして日本に来なければならなかったのか。帰国したら彼らにどのような仕打ちが待っているのか。そこも、できれば触れてほしかった。世界一、各国料理のレストランが楽しめると言われる日本で、日本に来ている外国人がどのような目に遭わされているのか。切迫した問題として、日本人こそが考えなければならないのである。

ビザに穴を開けられた後、サーリャの家族がラーメン店で食事をするシーン。明日への不安を抱えつつ、日本の風習に馴染んだ家族とそうでない家族、文句を言いながら笑い合うシーンは、光を含んだ思い出のようで印象的だった。終盤でも、サーリャにとって大事な瞬間だったことがわかる。こういう繊細な映像表現を織り込める、若い女性の監督に、今後も期待したい。
横山ミィ子

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