荒野の狼

ザ・トリップの荒野の狼のレビュー・感想・評価

ザ・トリップ(2021年製作の映画)
4.0
いわゆるタランティーノ的な映画を撮ってみようと思う監督は、世界中にいると思う。それほどタランティーノ節には、見ている者を惹きつけるバイブスがある。やってできない事はないだろう、しかしそれがおおむね失敗するのは実は、役者選び、つまりキャスティングにその原因がある。それっぽい音楽や絵作り、ストーリー展開は似せることは出来ても、肝心の演者に見応えのある味(テイスト)が無ければ単なるドタバタに終わる。
さて本作が、兎にも角にも及第タラちゃん映画になったのは、言うまでもなく、主役の2人の名演技あったればこそ、ご両名頭抜(ずぬ)けて上手い(惜しい事に脇は普通のコメディアンレベル)。ノオミとアクセルの絶妙とも言うべき表情と、言い争いを含む夫婦の会話を、そして「演技ならではのリアリティー」を、堪能というよりむしろ「観察」せよ。一見アンバランスな取り合わせだけれど、ちゃんと夫婦している。このエッジの効いた2人でなかったら、滑りまくりの並のスリラーコメディーにしかならなかったろう。
出だしで、その後使われる凶器の数々を、伏線とか言う小賢しい方法を取らずに、全部見せてしまう演出も洒落ている。
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