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あなたの顔の前にのYKのネタバレレビュー・内容・結末

あなたの顔の前に(2020年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

アメリカで暮らしている主人公サンオクが、突然韓国へ帰国し妹のもとを訪ねる。なぜ帰国したのか語られないまま物語は進むが、時折、サンオクは一人で祈りの言葉をつぶやく。「私の顔の前にある全ては神の恵みです。過去もなく明日もなく、今この瞬間だけが天国なのです」。カフェでのモーニングを、超ロングショットで捉えた姉妹の会話シーン。見晴らしが良く落ち着いた景色を見ながら、サンオクは「いいところね」と話す。だが、妹が「韓国へ戻って、いま建設中の新築のマンションを買って住んだら」と言っても、サンオクはあまり乗り気でない。「このあと見に行ってみる?」と言うと、「工事中のマンションを見るの?」と答える。どうやら彼女は、未来の話に興味がないようだ。アメリカでの話もあまりしたがらない様子。よく見ると、テーブルに置かれたマグカップの色が、2人を区切るかのようにそれぞれの衣装とリンクしている。

しかし時間が進むにつれ、サンオクの過去は否応にも現れはじめる。道端で出会った女性は、「昔テレビで観ました」と言って、サンオクが元女優であったことを明らかにする。成長した甥っ子や生まれ育った家との再会は、在りし日の幸せな時間を思い起こさせ、サンオクの行動に影響を与えていくようだ(もしくは、それ自体がサンオクの意図である)。甥が営むトッポギ屋でトッポギの汁を服にこぼしてしまったサンオクは、そのシミをつけたまま食事の約束へと向かう。朝と同じようにテーブルを囲うが、今度は『コーヒー&シガレッツ』のような市松模様が広がるテーブルだ。
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