みかぽん

オッペンハイマーのみかぽんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
原爆の父、オッペンハイマーの戦後は、冒頭のギリシャ神話、「神から火を盗み、人間に与えたプロメテウスの悲劇」に例えられていて、言ってしまえば彼の物語はその一節が全て、として過言はないくらいだ。
またオッペンハイマー同様、暗号解読機、エニグマを作り、英国をドイツから守り、結果的にヨーロッパをナチスから救ったチューリングの悲劇の戦後とも否応なく重ねながらの鑑賞。

生み出した子供の親であっても、取り上げられた瞬間にその手から離され、のちの口出しは一切無用とされ。
生み出した事の重大さから子を引き戻しにかかろうとする行動 ー原爆の8倍とも言われる水爆製造の反対ー を唱えれば、学生時代に片足関わった共産主義との抱き合わせ嫌疑で封じ込めにかけられ、結果、不忠誠とスパイ容疑の罪で公職追放されてしまう。
東西冷戦、マッカーシズム、これに追い討ったオッペンハイマーを恨むあれやこれやの輩たちの策略や乗っかかりやらの枝葉までもが絡みこんだ波状攻撃にも晒される。

日本人の私が言うのもなんだけど、アメリカ側の理屈で考えれば、オッペンハイマーは兵士を無事に帰還させ、終戦に向かわせた英雄のはずだろうし、水爆の製造反対を唱えた彼の思考変容に至ってはいちいち腑に落ちる😟😟。
なので科学者の皆さんには、政府に協力したところで(とりわけ戦時下にあっては尚更に)使い捨てされること間違いなし。関わんない方が身のためでは😩?と言いたくもなるのだけど、その才を持つ人間にとっては、科学が放つ誘惑、伴う駆け抜け一等賞の名誉、これらを叶えるための潤沢な資金提供に抗えないものがあるんでしょうね。
そして再び思考はプロメテウスの悲劇に立ち戻るの巻…😞😞。
みかぽん

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