「この世界の片隅に」で、原爆が投下された刹那をアニメながら描かれているからこそ、日本人である私が見るべきだと思い、IMAXで見ました。
原爆とは何か…それ以前に、科学が私たちに与えるものはどういったものかを、真摯に向き合うきっかけとして最適だと思った、オッペンハイマーという物理学者を辿る物語。
以前、東野圭吾の「禁断の魔術」(以降、禁断)で綴られた、“科学を制する者は世界を制する”という言葉。それは、世界に兆しをもたらす科学を指すのですが、禁断の中で、兵器だとはつゆ知らず、地雷といった間違った使い方をされ、絶望を抱えた人物が描かれます。
そして、本作の主人公・オッペンハイマーでも、禁断を読んだ時と同じ感情を抱きました。
実験はいつも失敗、けれど毎晩、机上の空論さながら、宇宙を爆発が包む光景を見るオッペン。そんな科学者として幼き彼が、爆弾を発明し、且つ研究の成功を収めて空論を実現する成長譚を、まずは楽しめます。執念やカリスマ性などなど。
それながら、政府の良いように勝手に動いてくれる存在として利用され、感じる成長の軌跡でさえ、虚実と認識されるオッペンの「没落」の描きが切ない。
それに伴う、学生運動や左翼の価値、跋扈するスパイの存在などの時代性。ゆえに、オッペンの悲劇的なドキュメンタリーの臨場感が、実に面白かったです。
決して美談には終わらない、オッペンハイマーの1人の人間としての生き様が最高でした! PS・世界史と倫理を学んでて良かったです。