ノーランにとって初の史実に基づくこの作品は、もちろんストレートな時系列ではないにしろ比較的わかりやすかった。
オッペンハイマーが彼の目で直接見たであろうカラーの映像と、彼の知らないところで起こったモノクロの映像
それなりに量子力学や登場人物の立ち位置を理解していれば十分に楽しめるし、むしろそれは必須かもしれない。インサートの映像の意味がわかるから。
あの音が届く前の奇妙な高揚感と、音が届いた瞬間の恐怖
何か本当に自分たちにも制御できないそれこそ未曾有のもので世界が変わっていく怖さがしっかりと感じられた
それでいて、彼らの純粋な研究や学問としての集大成をあんなふうに使われることへの憤りとか、天才の近くにいて天才になることを渇望していた人たちがいた。
モーツァルトとサリエリみたいに。
日本の描写がないことが話題だったらしいけれど、そんなのそうだろうよ。
彼は作っただけ、使うと決めたのも落としたのも彼じゃない。
それでも彼は生み出してしまったから。