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オッペンハイマーのtakagimashのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0
素直に楽しめるわけはないのだが、力強く繊細なノーラン作品では確かにあった。

オッペンハイマーの一人称視点に拘ったつくりゆえに、混乱する箇所も多いけど、自伝ベースで考えるとこうなんだろうか。視点外はモノクロ描写にすることでより明確に表現していたが、ある意味で過剰なエクスキューズのような気も。

キャスト陣は盤石で、苦悩しすぎず空虚にさえ見えるオッペンハイマーを演じたキリアンマーフィーは言わずもがな、フローレンスピューの危うさ、一瞬だったけど、ケネスブラナーやゲイリーオールドマンなどのレジェンドもすべて迫真。

一方で、観る前から気にしていた、自分自身の日本人としての心のざわつきは想定したよりあって、やはり冷静に観られない部分はあった。
一人称視点に拘って描いた本作品ではフォーカスがあたることは無かったから、スパイクリーの言うような視点があると溜飲は下がったのかもしれない。

時代や政治的背景、いろんな激流に飲み込まれて、才能ある人間が悲劇を現実にする恐ろしさ。いまだにロシア・ウクライナのように戦争が続く世界で、こうした注目作で核を描くのは意義はありそう。

ただそれ以上に、日本の支店で、ここまで原爆の被害へのある種切り捨てるような描写がむしろこれまでの日本が描いた戦争映画では得られなかった感情が出てきて稀有な作品だった。
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