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オッペンハイマーのmidukiのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

2024.03.30.

1番大事なこと「これは反戦映画」
日本国民ゆえに、バイアスがかかってることは承知。
ノーランのファンだから、観に行くという強い気持ちで鑑賞。

やはりトリニティ実験や、投下後の集会、聴聞会中に強い光がさすシーンではどうしても恐怖が。吐き気が。涙が。

原爆での民間人にまで及んだ被害を、直接的に、克明には描いていないという批判があったようですが正直この作品で描きたいことではなかっただろうから、この着地点がいいバランスだと思います。
逆に詳細に描いたとしても、批判が出るのは明白。
やはり被害者の声をありのまま描けるのは被害の当事者・その子孫である日本人の監督では?
だからというのは何だが、私はノーラン監督にそういうことは求めてないし、何も悪いことだとは思わないし、後述していますがお嬢様に被爆者を演じさせたことからも誠実に真摯に向き合っていたと感じます。決して軽視してはいません。その真逆でとても重く捉えていると感じます。

○もし描くと想像上の"上限"が定まってしまう。
"想像を絶する"惨状を描くために、敢えて描かない。行間を自分の頭で想像して(資料や被爆者の証言など原爆の知識を入れた上で)鑑賞する必要があるシーン。
トリニティ実験のカウントダウンの緊迫、あれは実験ではなく本物の緊迫。
ボタンを押そうとする人間の震え。
光(電磁波)は、粒子性と波の性質を併せ持つ。強い光と、遅れてやってくる衝撃波。その音響の迫力たるや。IMAXに行こう。

○ノーラン監督のお嬢さんが爛れた肌の女性を演じている。ノーラン監督の過去作での親子は強く深く大きな愛情で結ばれ包まれている。これは紛れもなくノーラン監督の価値観の反映。最愛のお嬢さまに、被爆者を演じさせたノーラン監督の決断をとても重く受け止めています。
被爆国の人間ではないノーラン監督が、原爆被害の輪郭を描くことに真摯に向き合って至った結論なのです。とても、とても重いことです。

○もう一度人名と立場をしっかり把握して見に行こうかな。

○こうでもしないと降伏しない、というくだりは大変グロテスクであったが…。
私としては、起こったことは起こったことなので、大量破壊兵器による殺戮は断固として連鎖させてはいけないという考えだけど、
平和教育で学んだ戦時中の日本の思想は本当に恐ろしかった。
外野がどうにか止めてくれたおかげで今の言論の自由があるんじゃないかと思う。
止め方は民間人への甚大な被害を及ぼす原爆の他になにかあったのか?といわれるとわからないけれど…。

○言論統制や思想の弾圧にピリつき、毎日の暮らしに困窮しながら、空襲に怯え、愛する人を失うともしれない、明日もしれない不確かな日々…そんな戦争の日々は、広島長崎の被爆により急転直下の幕切れを迎える。
被爆者をはじめ先の大戦で命を落とした先人たち・今も苦しんでる方たちの話を真摯に受け止めて、繰り返さないようにすることと、
自由で安全な現代の日本を作った人たちに感謝することは、矛盾するようなところもあるかもしれないが、私はどちらも大切にしたい。

○如何なる大量破壊兵器の脅威の連鎖には反対です。日本が最初にして最後の、唯一の被爆国であるこの現状が未来永劫変わらないことを強く願います。

○ニュートンが万有引力の法則を発見したきっかけのリンゴ。
青酸カリを注入したあとのあのリンゴ。
あれがそのまま爆弾に見えたの。
ニュートン古典力学から、アインシュタイン、そして量子力学へとつながってきた物理学という学問。
「物理学の集大成が、大量破壊兵器なのか?」

○「キッチンがない」
「シーツをしまえ」

○聴聞会のシーンの、あの追い詰め方、すごくすごく怖かったな…RDJが周到に用意した、オッピーを危険思想の持ち主としてハメるための場…。

○RDJ、オスカーの際のアジア人軽視にはすごく嫌な気持ちになった。アイアンマンは大好きなので…。でもまた、このストローズを見てると俳優としての演技が好きだなと思ったな。好きなので、より残念…。

○そしてそのオスカーでの唯一の救い、キリアンのスピーチ。「私たちは、原爆を作った男についての映画を作りました。そして、良くも悪くも、私たちは皆、オッペンハイマーの世界に生きています。だからこの賞を、平和を築く世界中の人々にささげます」

○トルーマン大統領、ゲイリーだったの?!もっかいしっかりみなきゃ。顔を繁々と見たはずなのに、気がつかなかった。ゲイリーも、特殊メイクチームもすご!

○What's happened, happened.
(-Neal from"TENET")

○我は死神なり

プロメテウス
のくだりは痺れた

○全編通して音響と劇伴ルドウィグヨーランソン(クレジットによるとヴァイオリンは彼の奥様?)の緊張感と、いつもサイコーだけど、今回も大迫力の映像を撮ったホイテ・ヴァン・ホイテマに👏

○パンドラの箱を開けた男の苦悩
パンフは必読

○配給してくれたビターズエンドありがとう

○ https://www.tokyo-np.co.jp/article/43014
トリニティ実験の実験地の近隣住民のなかで、がん患者が多数いるとのこと。
健康被害調査や補償も不十分でありながら闘病を強いられているとの報道。
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