凜太郎

オッペンハイマーの凜太郎のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
現代のアメリカ人の原爆投下に於ける倫理観を考える上で、この映画の日本公開は当たり前にすべきだし、日本軍だって核兵器や生物兵器を開発していたという歴史を私達日本人はどれだけ知っているのだろう。
(私自身、義務教育では少なくとも習っていない。)


正直、近年のハリウッドのスパイ映画やヒーロー映画に於ける核兵器の記号化にかなりモヤっていた。アメリカ人の(ひいては世界中の)若者が核兵器を記号化して、脅威を深刻に考えなくなるのではと…。

実際、ダークナイト・ライジングやテネットでの核描写も稚拙すぎるし、英雄1人が犠牲になってチャンチャン。みんなそんなことも知らずに平和に暮らしましたとさ、ハッピーエンドみたいな描き方をしている。

今回のノーランは(それをしてしまった)自身をオッピーと重ね、贖罪を持って本作を手掛けていた様に思う。
そして、彼自身の神であるアインシュタインへのリスペクトを混ぜた形で1本に上手く昇華していた。
正直なメッセージ性は伝わってくる。

しかし、欲を言えばやはり、広島・長崎の写真は1、2枚映画に差し込むべきだと思う。エンドロールでも。

ノーラン自身が本編のオッペンハイマーの様に写真から目を背けてしまったのが非常に残念だ。
そして、爆弾の威力だけでなく、放射能の脅威も描くべきだと思う。

余談だけと、配役が興味深い。
チャーチルを演じてアカデミーを取ったゲイリーオールドマンをトルーマンに。
戦場のメリークリスマスのローレンス、トムコンティをアインシュタインに。
プライベートライアンのマット・デイモンが前線に行かないグローブス大佐。
兵器開発王トニースタークのロバート・ダウニー・Jrが敵役のストローズ…。
狙ってるねー。
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