オッペンハイマー、なかなか日本公開が決まらなくてそわそわしつつずっと心待ちにしていて（テーマ的に複雑だけどあくまでノーランの新作として楽しみだった）、ようやく観ることができて最高だった。
私って思ってたよりノーラン作品が好きなんだな…と気づかされた。映像、劇伴音響、セリフ、演出からほとばしるノーラン風味が良すぎて、コレコレ〜！！と膝を打ちたくなる。そんなテンションで観る作品じゃないんですが…
鑑賞中、ずっと静かな緊張感に縛られていたのでエンドロールに入った瞬間力が抜けた。良かった・面白かったとも言えない、ただただ「凄かった」という感想が一番に来る。あと怖かった、すごく怖い映画だった。
原爆が完成されたらどうなるのか、我々は知ってしまっているので完成までの道程が本当に恐ろしく緊張感があり、トリニティ実験のシーンで恐怖のピークに到達する。
爆発の映像と音響も凄まじくてとにかく怖かった。青白い光と轟音、IMAXレーザーGTの迫力もとんでもなく、映像体験としては素晴らしかったが。。
こんなものが人々の上に落ちるのか、と想像するだけで恐ろしすぎて具合悪くなりそうだったし、実験後に爆弾はオッペンハイマーの手を離れてあっけなく投下されてしまうことも怖かった。どうしてこんなことに、と何度でも思ってしまう。
日本に対する描写はどうなんだ…という意見もあるようだけど私はとくに違和感や不快感は抱かなかったし（もちろん辛い気持ちにはなったが）、限りなくフラットに、正当化も美化もされずにオッペンハイマーという人物の物語が描かれていたと個人的には思う。
かつ、彼に同情も共感もできない。このあたりの人物描写におけるバランス感覚が本当におもしろい。すごくノーラン節を感じる。
ノーラン作品の登場人物を見てると「なんやこいつ…」って気持ちになりませんか？本作におけるオッペンハイマーも「なんやこいつ…」って感じだった。なんか苦悩してても正直それはそうだろ…と思うし。
血が通ってるんだか通ってないんだか…、なんというか低温な人物描写がクセになるんだよな。
それはそうと実在したオッペンハイマーとその周辺については勉強不足だったので、復習して改めて観に行きたい。予習なしでもストーリーは追えたけど完全に理解できたかというと、……？なので…。
それと、日本的にはやはり『原爆投下』は大きすぎるポイントでありひとつの終着点であるわけだけど、アメリカ及び世界的にはひとつの通過点でしかないんだな…と実感して非常にやるせない気持ちになった。
そのあとの赤狩り内輪揉め、冷戦…とさらに争いは続いていくし、現代でも戦争は行われているし、月並みな言葉だけど人間の愚かさを心底感じた。
キリアン・マーフィの目が最初から最後までずっと綺麗で美しく、ある種皮肉のようにも感じてしまった。素晴らしい演技でした。毎度のことながら俳優陣全員素晴らしい。。
