広島・長崎を襲った原爆投下に関して正当化してるだの、当時の模様をリアルに描かれてるだの、良くも悪くも色んな前評判があって幾分のバイアスを持っての鑑賞を余儀なくされたものの、それほどセンセーショナルな印象はなかった。
むしろ自己の物理学理論の理想を突き詰めていく余りに平和どころかこの世界を崩壊させてしまいかねない凶器を生み出してしまったと言う現実との狭間に揺れる1人の物理学者の苦悩に焦点を絞ってストイックに描かれていると言った印象だった。
その証拠に割と日本に対しても某関西の観光地をちょっと褒める台詞があったりしたし、やたら「ヒロシマ」「ナガサキ」など実際あんだけ地名を丁寧に強調して言ってたのかも疑問だったし、全体としては日本への原爆投下に関してかなり慎重に考慮して制作していた模様を窺い知れた。
で、私の記憶が確かならば当時のあの原爆投下は「大体九州全般辺に投下するかも」ってニュアンスで、実際北九州に投下するつもりが、天候だかの何かしらの関係で長崎になったとか言った話だったし当時の日本への大雑把な捉え方とは大きく異なっていると思った。そしてオッペンハイマー自身も原子爆弾の成功以降もっと日本に被害が及ぶ事に関してはネガティブな反応だったんだけど実際これぐらいの規模の爆弾作って実験段階で物凄い爆発力があった訳でそれぐらい被害ぐらい予測してたんじゃないかなとも思ったりもして。当時をあまりよく知らない立場から言うのもアレだけども、この映画見る限りでは全体的に日本に気を使っている、と私は思った。
ただ本作の音響効果だとか演出は凄まじくてDolbyCinemaによるど迫力の地響き鳴るあの原子爆弾実験成功シーンは本当にヒリヒリと痛ましかった。
本来、こういう映画における音響効果と言うのは、例えばゴジラがやってきたど迫力だとか、ワンダーウーマンがゴールドアーマー装着してビルの屋上から華麗に飛行しているシーンだとか、あるいは音楽ライブのバンドダイナミズム溢れる臨場感を体感するだとか、ある種娯楽的なカタルシスを堪能するためにあるものだけれどもこういう戦時中の原子爆弾を体感するというシリアスな体験をヒリヒリと味わうためにあるものとして考えればおそらく私の映画鑑賞体験では初めてだった。
そう言う意味でのリアリティを身をもって堪能するにはIMAXだのDolbyCinemaだの音響に凝ったシステム上での鑑賞の方がより、臨場感を味わえて望ましいと思う。
そしてストーリーの内容からちょっと脱線するが、量子理論や相対性理論でいまだに効力を保っているあの天才物理学者アルベルト・アインシュタインが出てくるのだが、彼に実際に会うと本当にああいう感じの人だったんだろうなと思わせる位のリアリティーぶりだった。実際アインシュタインと言う人は学者然としたイメージとは別に愛人6人いただの実はイスラエルの大統領にスカウトされてただのノーベル賞受賞金額を全額離婚調停の財産付与に当ててただのネタに事欠かない人なのでノーラン監督の次回作でもその次の次とかでも良いのでにを主役にした作品をリクエストさせて頂きます。
あ、その時はもうちょっと短めの作品を(笑)
