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オッペンハイマーのおはうちのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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もちろん池袋グラシネで観て大変良かった。爆破実験で立ち上がる火柱のスペクタクルは言い表せない背徳的な美しさがあって泣いたよ。無音表現が絶品。キリアン・マーフィーのクローズアップの厳しさ、物を言わず全部を湛える顔面。IMAXの使い方の最適解の一つを観たように思う。

主人公と〇〇との邂逅で交わされた会話をブラックボックスにわざとらしく押し込んで秘密にして引っ張っていき、いざラストは秘密の開示とかベタながら上手い円環構造で流石だったよ。それしか無いよな!

ここちょっと分かり辛いかもな裁判劇パートは劇伴で、ここ良いこと言ってまーすとか、いまメッチャ追い詰められてまーすって、分かりやすい旋律で動線を強引に引っ張って盛り上げてたのがアレでしたね。チラチラ分かりやすく料理してますからね!って見てくる感じで分かりやすかったね。

時系列が前後したり専門用語も多いし人物が沢山出てきて複雑で分かり辛いのは確かなんだけど、ラミ・マレックが一泡吹かせましたって台詞を放ったらロバート・ダウニー・Jrが「どしぇ〜」ってリアクションするしメチャクチャ分かりやすかったけどね。あと劇伴で意図が分かり易い!

被爆国の視点で言えばロバート・ダウニー・Jrのパートって全然面白くないんだよね、原爆投下の是非と関係ねー!!って思っちゃうから。そっちの視点に興味無い。ゴッソリとカットすりゃあ二時間に収まるでしょ。

ゲイリー・オールドマンの使い方が上手かったな…あの数分で持ってく持ってく。ハンカチ!



でもなぁ

改めてノーランの潔癖症な気質を唾棄したくなった。劇中のエミリー・ブラントのように。ラスト地球を覆う核の炎のイメージ映像なんぞよりも広島原爆投下を見せればコトが足りるだろうに、カッコ付けるんじゃあねぇよ。被爆者の写真を必死に見ないで目を瞑るのは演出やテーマとしては分かるが腹立つ。その姿勢で映画撮るのかよ…。

本人が目撃していない件については描写しなくても良いルール設定がホント役に立ったな。見せないのが演出になってるし上手いよ、でも本当にそれで良いのかよって胸ぐら掴みたくなったな。良心の呵責を覚えて観衆の声が聞こえない演出とか、黒ずみになった人間を踏みつけてしまうとか、オッペンハイマーの顔面以外の空間がガタガタに揺れて自尊心が崩れていくのとか悪くないが、どうしてもお為ごかし感が拭えない。

オッペンハイマーの頭の中で生じたイメージしか見せない映画なんでしょうけど、何でよりにもよってこの題材で披露しちゃうんだろうなってムカムカが迫ってくる。ほんとノーランさん残虐描写や血とか怖そうに思って、映画には必要無い性格してんだな。だからこそ今の地位まで上り詰めたのも確かなんだけど、お前さ〜!

あんな地球が燃えてま〜すって、イメージ映像止まり程度で本当に世界へ警鐘を鳴らしているつもりなのか!世界を背負えるって言うのかい!?という異常者の感想なので無視してもらって構わないです。
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