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オッペンハイマーのででんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
科学者たちは、人を殺戮しようとして爆弾を作っていない。
自分たちの理論や力がどこまで実現できるか証明したくて一生懸命で、人間を超越したところに思考があり、人間の感情や生活はそこには存在しない。赤ちゃんもほったらかすし、キッチンが家に無くても気が付かない。
政治家が、アインシュタインに無視されたと気にしているとき、天才科学者たちは自分の考え方が世界を変えてしまったという誇らしさと絶望で頭がいっぱいだ。人間のことなんて見ていない。
ふと我に返ったときには、毒リンゴは食べられた後だ。

『風立ちぬ』を思い出した。
"一機も帰ってきませんでした"

そういえば、日本人として原爆以降のことを考えたことがなかった気がする。
私たちは原爆が落とされた、同じ世界に地続きで生きているんだと、、当たり前のことだけど、本当に恐ろしいと思う。どうすればいいんだろうか。人を殺さないで。


キリアンが素晴らしかった。ノーラン監督のキリアン愛も素晴らしかった。ロバダニはあんなにイヤな奴役なんだから、あんなトロフィーの受け取り方はダメすぎるっと思った。

茶化さず、敬意がある作品だと思った。音楽も素晴らしかった。広島長崎の描写が無い、という評判も正直そんなに気にならない。オッペンハイマーのいる場所に間接的に伝わるだけの言及は沢山ある。直接的な描写がなかった、という感じだった。

東京大空襲の後の「慣れてきている」というセリフが適切で恐ろしかった。


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体調不良の祖父に会うために乗りたかった、大阪行きの新幹線の終電を逃してしまったので、始発を待ちながら新宿バルト9で夜中に見た。

祖父は長崎の被爆者で、沢山いた兄弟たち家族をすべて失っているらしい。でもその話を直接聞いたことはない。
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