アメリカ映画がここまで正面切って「日本に原爆を投下する必要はなかった」と言い、しかもその価値観がアカデミー賞に肯定されたことに歴史的な意義がある。
飽くまで映画であり歴史ドキュメンタリーでは無いので、史実とは異なる等の指摘には意味が薄いと混じる。今の時代に明確な反核のメッセージ性を持つ作品が生まれ、それが評価されたことが重要。
映画としては基本的に台詞劇でありながら映像と音の圧が凄まじく、常に緊張感がある。時系列の往復がノーラン映画史上最も複雑な上に登場人物が多いため(最初の1時間くらいは特に)混乱するが、「何だか凄いものを見ている」と感じさせる。
ノーラン監督の一番凄いところはこんな風に観客の知的レベルや教養を問わずに知的な興奮を抱かせるところだと思っている。映画を観た後だとなんだか賢くなったように錯覚する。これは監督本人が天才ではあるものの「全てを観客に理解してもらう必要は無い」と考えているバランス感覚ゆえなのだろう。
ノーラン節は炸裂しまくっているものの、一方で娯楽映画のわかり易い面白さは無い。が、そんな事はどうでもいいくらいエンディングで覚える衝撃が凄まじい。正面からぶっ飛んでくる160kmのボールを顔面で受けたような気分になる。そう、日本人からすれば後頭部を殴られたような衝撃ではなく、正面からやってきた飛び道具的衝撃なのである。
実はこのエンディングで自分は泣いてしまったのだが、泣いたのは恐らく自分だけではないと思いたい。この作品を作ってくれたことに感謝
