クリストファー・ノーラン監督が大好きで、原爆を題材に撮った映画ということで、ずっと楽しみにしていました。
悪魔の兵器、原爆を生み出してしまった科学者の苦悩を独自の映像表現と音像で内面をえぐりとるように描写しているのは流石だと思います。ただ、科学者の苦悩がテーマで原爆や戦争が主題ではなかったので正直日本人としては物足りなさは感じました。
直前に原爆資料館を訪れる機会があり、あそこで見た事実の数々があまりに重たすぎて、この映画は表層的に留まっているようにしか見えませんでした。また、いつものように時間軸を往復させていましたが、あの原爆を落としたあの日とあの結末が全てであるはずなのに、フォーカスの当たり方が曖昧だったように思います。当時の時代背景や事実に基づいているので仕方ないですが、赤狩りや公聴会会でのやりとりなど人間模様を描いたことも、作品として原爆が引き起こした事実から目を背けていたように感じました。
原爆を扱う映画が少ない中貴重な挑戦をしてくれたと思いますが、一方でこれが映画の限界であり、欧米人の限界なんだろうと思いましす。結局アメリカは原爆を落とした唯一の国なのに、英雄気取りで正当化することしかしませんから。それが歴史であるので仕方ないことですが、人道的な問題は日本人として問うていくべきだと改めて思いました。
この映画は原爆のことを知る入口の映画であり、所詮欧米人はこの程度にしか考えていないことを知る映画としてはとても意味があったと思います。
