藤崎

オッペンハイマーの藤崎のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

IMAXレーザー・映画館補正 ☆5.0

人類への警鐘を鳴らす、クリストファー・ノーラン監督。鑑賞中は、常に恐ろしさが付き纏う傑作。
内面を描く映像表現、音響の使い方が上手く、個人的にはIMAX推奨だが、日本人として幼少期から被爆国として教育されてきた身として、かなりキツい描写がある。原爆投下後、賛辞と自責の念に駆られるオッペンハイマーのシーンは筆舌に尽くし難い感情が溢れ、目に涙が浮かんだ。



・マンハッタン計画の最中、常に泣き続ける赤ちゃん(未来)。兎に角、音の使い方が秀逸。臨場感があり、不安を煽る音楽とSE。最早、ホラーである。そんなものが、広島と長崎に落とされたという事実に恐怖するのだが、それまで描かれてきたマンハッタン計画への過程と実行がテンポ良く、面白過ぎるので複雑な気持ちにさせる。

・キリアン・マーフィーの熱演。映像での内面表現。前半の怒りに身を任せて、青酸カリを青リンゴに注射したり、女性関係が派手な共感性の薄いオッピーに対して、後半では精神的に参っており、窶れた表情による対比が凄まじい。

・戦後、オッペンハイマーとストローズの戦争責任、スパイ容疑と私怨による武器の無い争い。人間社会の核連鎖反応。争いの根幹を描き、核兵器の影が依然として人類を脅かしている。核だけでなく、遺伝子組換えやAI等に対しても警鐘を鳴らしている様に思えた。
『世界はそれまでと変わってしまった。我は死神なり、世界の破壊者なり』

・今一度、核兵器との向き合い方を我々、人類に警告し、問いかけるラスト。
最悪の兵器を生み出してしまった罪は、ゼウスに罰を受け続けるプロメテウスよろしく、オッペンハイマーが背負い続ける事となる。しかし、彼一人で償えるほど容易なものでは無かった。そして、同時に加害意識の無いアメリカ国民も描かれる。
観て欲しい気持ちはあれど、僕は簡単に薦める事が出来ない。

・広島、長崎の惨状を描いていないという批判があったとの事だったが、あくまで、罰を求めるオッペンハイマーの罪の物語であって、直接的に描く必要性を僕は感じなかった。
それに、広島と長崎の惨状を映像で公開され、目を背けるオッペンハイマーのシーンがあり、彼の現実から逃避しようとする描写があるので十分だと思った。

・ジーンやキティ、テラー、ラビ等魅力的な登場人物と豪華俳優陣の演技、太ったマット・デイモンも良かった。話したい事が多過ぎるほど、濃密な3時間だった。
登場人物が多過ぎて理解が及んでいない箇所や、見落とした部分も多いと思うし、再鑑賞したい気持ちもあるが、内容的に暫く時間が欲しい作品。



『我々は未来を想像し、その未来に恐怖を覚える』
藤崎

藤崎