オッペンハイマーのちゃ鍋のネタバレレビュー・内容・結末

ノーランらしい時間軸の錯綜した物語構成だったが、やはりこの作品も必要に迫られて記憶を手繰っていく中で過去が瞬くように登場しては流れていき、この錯綜したスタイルに合理的な理由を与えているのが良かった。
音楽もよかった。足を踏み鳴らす音の複線回収や、無音と爆音の緩急が飽きさせない。

トリニティの実験の時、ベットでのトランスサンスクリット語を想起して呟くシーンが特に好きだった。トリニティ計画の興奮の光と影のようなものと、彼女を見殺しに？あるいは端的な想像力の欠如によって殺したという暗い部分がこの詩によって印象的に表現されていた。

ともあれ、この作品は彼の奔放な恋愛とカリスマ的な核の研究という２つの側面のバランスがとても上手く絡み合っていて、それらのシーンが何も無駄になることなく回収され、重なっていくイメージ、幻覚、すべてが過激で生々しくラストにつながっていたのがとても良かった。

もともとのこれらの裁判やオッペンハイマーについての基礎知識が無いと物語を理解するのにやや難しい部分もあるし、必要なことではあるがものすごく緊張感のある映画なので鑑賞後の疲労は甚だしい。また、他作品を見たことがあったからこそ物語の構成のされ方をすぐ受け入れることができたが、そうでは無かったら時間軸が飛び飛びであることを理解するフェーズも必要であり、さらに大変だろう。しかし、このような大変さを加味しても面白いと感じられる点が彼の上手さなのだろう。

個人的に好みだったのはジョシュ・ハートネットの演じるアーネスト・ローレンスで、顔はちょっと胡散臭いインテリメガネみたいな印象があるのだが少しふくよかで丸みのある体系なのがギャップでかわいい。しかし、のちに調べたジョシュ・ハートネットの普段の姿はそこまでタイプではなく残念に感じ、記号的な要素から好きになる現代人への咎か、と思うなど。