オッペンハイマーという人物は大学生の頃、文化人類学の授業で一度テーマとして取り上げられてたことがあり、だからノーランがこの映画を作るって知った時からすごく興味があった。多分ノーランの映画を観たいって人は前半が好きだと思う。難解なストーリーでテンポが早い割に長尺・迫力がある映像とまさに通常運転のノーランといった感じ。正直途中うとうとした。ただ、後半がとにかく面白かった。授業の時教授は、この人物は死ぬまで良心の呵責に苦しんだと言っていた。そういった苦悩や人間ドラマが見えてくる後半は、熱のこもった演技も相まって見応えがありとても良かった。「我は死なり。世界の破壊者なり。」このセリフは授業でも聞いたが、その時はどういった意図で彼がこの言葉を発しているのか分からなかった。この映画を観て、彼はあのセリフを発する事で、後世に残る負の遺産を生み出してしまったという十字架を一人で背負っているのだと思った。広島・長崎への原爆投下の様子が描かれていないことに対しては賛否両論あるようだが、個人的にはその描写は必要ないと感じた。むしろ描かれていないからこそ、核の威力を知っているオッペンハイマーが被害を想像し苦しむというシーンに繋がってくると思うから。毎回中盤くらいまでは意味わからねーとしか感じられないのに、最後まで観るとめちゃくちゃ面白い映画観たと思って帰るの、ノーランの思う壺で悔しい。
