単なる一人の科学者の半生を語るだけの内容なのだけど、飽きさせない工夫が多くて、さすがといった感じ。
時折要所で入るドーンという腹に響く爆発音的なものは、原爆の怖さを知っているからこそ、ホラー映画のように恐怖を掻き立てるし、なんの説明もなくストロースとオッペンハイマーの対立を時系列ごちゃまぜにして、見てる側の意識を途切れさせないようにしてるし、科学者たちの研究や理論に打ち込むピュアさが、対比として戦争や政治の狂気を引き立たせてるし、見ごたえ満載だった。
ノーランがなぜ今オッペンハイマーを題材にしたのかは知らないのだけと、原爆による被害の大きさ、非人道的な行為に対しての批判は、それなりにすでに語られていることでもあるので、そうではなく、今のAIの進歩や原爆をどんな国でも作れる時代に、さらに危険なものができていく可能性もあって、その時に技術的探究心よりも、結果に対しての道徳的な判断もちゃんとしていかないとだめだよということを伝えられてる気がしました。
この映画がせっかく賞をとってより多くの人の注目を集めたのだから、はだしのゲンとか火垂るの墓とかこの世界の片隅にとかと同時上映したりすればいいのに！と思ったり。
