ホラーの鬼

オッペンハイマーのホラーの鬼のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
2024年 33作目 (劇場14作目)

今までのノーラン作品の中では史実を基にしていることもあり、親切な方の作りになっていた。独自の映像表現(本作ではトリニティ実験シーン)だけでなく、政治的な事情に翻弄させるオッペンハイマーの苦悩や対立などストーリーの面白さも際立っていた。会話の情報量が多く、飽き飽きするところもあるが、それも含めて映画体験のように感じた。

序盤、通常のスクリーンではなかなか感じることのない椅子が重低音で揺れるような演出や宇宙をモチーフにした映像表現。映画館で観ることの意義を非常に感じた。中盤のトリニティ実験の緊迫感、無音の中で開発者たちの息遣いや閃光の恐ろしさは映画史に残るシーンだと思う。

登場人物も非常に多く、ほとんど印象に残っていなかった人物には少し回想が出るような親切設計ではあったが、覚えていないことも多々あった。日本での公開は一年近く遅れての公開となったが、本作はオッペンハイマーの視点で描くことが貫かれていることはある意味で潔くて良かった。広島や長崎を描くのであれば、相当な配慮が必要だと思うので、情報だけにしたところは英断だった。今年を代表する傑作だった。
ホラーの鬼

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