KanoーseiKo

オッペンハイマーのKanoーseiKoのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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音が怖すぎる。絶望感で涙がでた。

没頭で何も聞こえなくなっていく
騒音で何も聞こえなくなっていく
そういう感覚がとにかく怖かった。怖すぎた。

オッペンハイマーの人生ダイジェスト版を、文字通り畳みかけられるような感覚で観ていたけれど、唯一、広島に落とすと決める会議は尺含めリアルに描かれているような気がした。終始バックにあった不穏な音もここでは消え、彼らの会話だけが浮かび上がる。京都は妻とよく行きましたすごく良いよねで回避というのが、広島で14万人・長崎で7.5万人を殺した原爆投下は人によって行われ、人によって望まれたことなんだという現実を突きつける。
今もイスラエルガザ戦争でこういう会議が行われているのかな。ささやかだけれど不買運動をこれからも続ける。

観る前は、ひとりの学者が自分の研究を成し遂げようとする好奇心を政府に利用されたという話だと思っていたけど違った。
オッペンハイマーというひとりの人間の弱さや見栄の話だったと思う。オッペンハイマーが格好良く映っているシーンはひとつもなく、終始小さな人間だった。

冒頭のりんごのシーンがこの物語、ひいてはオッペンハイマーという人物の全てのよう。「青酸カリ→死ぬ」ということは知っているけれど、それが今ここにいる「私」がそこにいる「教授」を「殺す」ということだと想像するのが苦手なんだと思う。
原爆はこのリンゴの時のように、個人的な問題にとどまらなかった。

とにかく怖かった。
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